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2017-12-15

生態系の多様性維持に寄与する蒸留酒の可能性

皆様は、日常的に蒸留酒をどれくらい召し上がられますでしょうか。私(スタッフ藤木)個人の話をさせて頂くと、アルコール飲料としては、ワインが95%で残り4.9%がビール、蒸留酒はスピリッツやウィスキーを含めて0.1%以下だと思います(カクテルはとてつもなく弱いのでほぼ0です)。

そして、あまり飲む機会のない蒸留酒のなかでも飲むものといえば非常にレンジが狭く、ウィスキーのミシェル クーヴルー、グラッパのロマーノ レヴィ、ボタニカルブランデーのスティーレミューレ、アルザスのジェラール シュレールのマールあたりです。加えて、最近友人から頂いたラム J.Mもわが家の定番にはなっていないですが美味しかったです。

蒸留酒の経験と言ってもこのように限定的なものではありますが、最近そのさらなる可能性に気づかされることもあり、急速に興味を深めています。

なかでもありがたいご縁は、また別の友人が手がけるプロジェクト、千葉県大多喜町の薬草園跡地に設立される予定のボタニカルブランデーの蒸溜所 mitosaya(ミトサヤ)の関係者の方に話をうかがう機会もあり、スティーレミューレをはじめとするボタニカルブランデーの可能性に引き込まれていきました。

このmitosaya(ミトサヤ)のディスティラーである江口宏志氏は、スティーレミューレのクリストフ ケラー氏に師事し、ボタニカルブランデー造りを学んだ方ですが、彼を中心に様々な方が協力し、日本の気候風土が生み出す多様な植物の個性を1本のボトルに写し取ろうと準備をすすめられています。

そんな関係者の方とのディスカッションや、2017年12月に初めて日本でご紹介したジン ベレの造り手たちとの対話のなかで、気づいたのは、ボタニカルを多用するこの種の蒸留酒が社会や自然環境、またそこで働く農家に与えるポジティブなインパクトです。

ジン ベレを例にあげると、ひとつのロットに使うボタニカルの種類で既に数えきれないほど多く、それでいて蒸留というプロセスへ経るために、ひとつひとつのボタニカルはある程度まとまった量が必要となります。多様な植物を(ワインなどの醸造酒と比較すると)大量に必要とし、それでいてそれぞれが上質なものでなければいけない。このボタニカルを介した広く深いネットワークには、多くの人と土地、自然環境が関わり、それぞれがポジティブなフィードバックを循環させます。

例えば、様々な野草や野花、植物を継続的に用いることは、生態系の多様性の維持に結びつきますし、フルーツなどの栽培された作物であっても、蒸留の過程で様々な成分が凝縮されることもあって、化学物質を多用した作物は忌避され、より純粋な作物が望まれます。それでいて、その作物の品質において重要なのは風味であり、浸漬して蒸留してしまうために、外観は全く重要ではありません。これは農家にとっては、規格外(当然ながら有機栽培をはじめとする自然な栽培手法ではある割合で発生します)として販売することができなかった作物に価値を与えることができることを意味します。

そんなこんなをぐるっと一周して、上質の原材料で造られたボタニカルブランデーは、飲む私たちに大きな喜びと感動、癒やしを与えてくれる特別な液体となります。

これほどまでに広く幸せを分かち合える。これこそがボタニカルブランデーの可能性であり、本当の魅力だと感じています。当社としても新しい挑戦ではありますが、ぜひ皆様に体験して頂き、このポジティブなフィードバックループに加わって頂きたいと思っております。

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