ブドウを観察する事こそが、ブドウの想いを感じる最良の方法
ロワール地方 アンジュ地区、才能溢れる様々な生産者が密集するフランス自然派ワインのホットスポットです。恵まれたテロワール、シュナン ブランを筆頭とした挑戦しがいのある様々な品種、そして畑の取得が比較的容易である点など、様々な理由がワイン生産者を志す若者たちを惹きつけます。元システム エンジニアという異色の経歴を持つグザヴィエ マルシェもその一人。自然に向き合い、その向き合った分だけ結果として返ってくる仕事をしたいとこの地でヴィニュロン(ブドウ・ワイン生産者)としてのキャリアをスタートさせました。
もちろん、親の代からのワイン生産者というわけではない彼が、ワイン造りを新たにスタートさせるというのは容易な挑戦ではありません。畑の取得や設備の購入などにはある程度まとまった費用が必要となり、ワイン造りを始めても最初の収入が得られるのは数年先。グザヴィエ マルシェも例に漏れず、貧しい中での挑戦となりました。
彼の醸造所を訪問すると、簡素な建物の中に古い木製の圧搾機があり、後は熟成を待つ樽が並べられているだけ。醸造中に電気を用いるのは瓶詰め時に樽からワインを組み上げるポンプ程度というだけあって、特別な機械や設備はありません。そして、ワイン造りも至ってシンプル、良いブドウを収穫し、優しく圧搾した後は木樽でゆっくりと熟成を待つだけと言います。そんなシンプルな造りにもかかわらず彼のワインは圧倒的なまでの個性と魅力を備えています。
彼にその理由を尋ねたところ、「畑に行こう」と誘われました。
彼の畑は砂地やシスト土壌の台地にあり、この土壌は熱を蓄える性質があるためにブドウが早く熟すと言います。この地で良いブドウ、良いワインを生み出す為にはとにかく頻繁に畑に足を運ぶことがまず大切と言い、彼は毎朝畑に来てはブドウ樹たちが喜んでいるかどうか観察すると言います。
「ブドウの声が聴こえるのですか」そう尋ねてみたところ、「ブドウは言葉を話すことはないけれど、怒っているのか喜んでいるのかを僕らが感じることはできるよ」と教えてくれました。とにかくこの仕事は「感性」が大切だとも。感性を解き放って、ブドウそのものをとにかく観察することこそが、畑での仕事だと言います。そのため彼は、手作業に徹底的にこだわります。収穫は勿論のこと畑を耕す際にも機械は用いず、馬の力を借りて耕して行きます。
「機械を使ってしまうと何も考えなくて済む、ただただ作業になるんだ。そうなってしまうとブドウを観察すること、ブドウの想いを感じることを忘れてしまうだろ。」
「そして何より、こうして畑で働いていると虫もやって来れば、動物もやって来る。鳥はブドウの実を食べちゃうしウサギも沢山食べるけど、それでもこんな環境で働くこと自体が楽しいんだよ。」
ちょうど訪れた時期は剪定のタイミング。幾つかの区画は既に剪定が済んでおり、その幾つかを案内してくれました。畑を歩きながらグザヴィエは「そして畑での仕事でも特に大切なのが剪定なんだ。」と言います。
グザヴィエいわく、剪定の段階でブドウの品質のかなりの部分が決まり、そのため剪定の段階でどこまでリスクを取れるか、どこまで品質を追求した栽培に踏み込めるかが最終的なワインの品質を決める事になると言います。霜の被害や雹(ひょう)の被害、その他の病害や挙句には鹿などの獣害まで、ブドウを失うリスクは収穫のその日まで多数あります。それでも剪定という栽培の最初の段階で、どこまで一房のブドウ、一粒のブドウに力を込めることができるかを考えた剪定が最も大切なのだと彼は断言します。
剪定作業は、その年のブドウの品質だけを決めるわけではなく将来のブドウ樹の成長や品質に関わる仕事であり、そのためグザヴィエは、1年後、2年後のブドウの成長を考えて剪定を行います。
「剪定って言うのは広いキャンバスに絵を描くようにするんだ。自分の感性を信じてね。」
自然を愛し、手作業にこだわるナチュラリストのグザヴィエ マルシェ。そのこだわりはワイン出荷前の最後の作業であるエチケットの貼付作業でも発揮されます。エチケットは全て1枚1枚手貼りされ、その際に使用される糊はなんと彼の地元で生産された小麦から作られるもの。2012年ヴィンテージから採用されたデザインは、彼の友人でやはりこの地域に住むデザイナーに依頼したと言います。地元を愛し、自然を愛する、そんなグザヴィエ マルシェの人柄がきっと彼のワインの味わいから感じられるはずです。
各種ワインのラベルダメージ・ボトル汚れに関して
2014年度に日本初入荷となった2011年および2012年の各種ワインですが、入荷時の検品にてほぼ全てのボトルにラベルダメージやボトル汚れなどが見られました。おそらく、日本向けのまとまった数量の出荷に際し、先述した地元の小麦で作られた糊で手貼り作業を急ピッチで行ったため、糊が完全に乾ききる前に箱詰めしたことが原因と考えられます。また引き続き入荷しました2013年以降の各種ワインに関しましても、それ以前と比較すると改善が見られたものの糊を用いて手貼りした際の指の跡などが見られます。ワインの味わい自体は非常に魅力的なものとなっており、手作業や地元産の材料にこだわる生産者の想いも鑑みまして、これらのワインをラベルダメージの状態のまま販売をしております。お買い上げをご検討のお客様におきましては、この点予めご理解およびご了承頂きますようお願い申し上げます。
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L’Elixir Onirique / レリクシール オニリック
産地:フランス ロワール地方
品種:カベルネ フラン、シュナン ブラン
「夢見る霊薬」と名付けられたワイン。徹底的に収穫量を制限し凝縮感を得たシュナン ブラン及びカベルネ フランから造られるペティアン ナチュレル(天然発泡)。近年はヴィンテージによって品種構成や醸造に多少の違いこそあるものの、完全に発酵が終わる前の果汁をボトルに詰め、ブドウ自体の持つ糖分のみで引き続き発酵を行い、その際に生じる炭酸ガスを液体に残したスタイルのワイン。通常のペティアンに比べてアルコール度数が高く、味わいもより引き締まったドライな味わいとなるため、複雑味と大人びた雰囲気を備えたワインに仕上がる。
自然酵母による発酵。厳密なろ過や清澄作業も行わず、瓶詰め時の亜硫酸も無添加。
L’Elixir de Jouvence / レリクシール ジュヴォンス
産地:フランス ロワール地方
品種:シュナン ブラン 100%
「若さの霊薬」という意味のレリクシール ド ジュヴォンスは、収穫量を抑え凝縮したシュナン ブランから造られるワインをやや酸化的な条件で熟成させる白ワイン。ヴィンテージによってそのシェリーのような酸化的な味わいの強弱は異なり、ジュラの酸化熟成したサヴァニャンを思わせるほどのヴィンテージもあれば、硬質なシュナン ブランらしいシャープな味わいとなるヴィンテージもある。近年では、2011>2012>2014>2013>2015 と言った順で酸化のニュアンスは穏やかに。
自然酵母による発酵。厳密なろ過や清澄作業も行わず、瓶詰め時の亜硫酸も無添加。
Fantasmagnorie /ファンタスマゴリー
産地:フランス ロワール地方
品種:シュナン ブラン
キュヴェ名は、18世紀末にフランスで発明された、幻灯機を使い光と影、煙等を組み合わせた幽霊ショーより。
シスト土壌に植えられた樹齢50年弱のシュナン ブランを全房のまま、グラスファイバータンクで8か月間マセラシオン。その後、80%をイノックス タンクで、残り20%を樽で熟成させ、ブレンドさせます。
オレンジやピンクグレープフルーツ、その皮といった柑橘系の香りが特徴的で、味わいは甘いニュアンスが感じられつつもドライに仕上がっており、繊細で細かなタンニンが全体に構造を与えています。熟成させてワインに厚みを与えるために澱を残して瓶詰を行っています。
L’Elixir de Longue-Vie / レリクシール ド ロング ヴィ
産地:フランス ロワール地方
品種:カベルネ フラン 100%
「長寿の霊薬」と名付けられたワイン。グザヴィエ マルシェの手がける唯一の赤ワイン。通常カベルネ フランと言えば青っぽいニュアンスで敬遠されることが多いですが、このワインに関しては、圧搾を非常にゆっくりとしたスピードで優しく行い青さのないピュアな味わいの赤ワインに仕上げました。色調も通常この地域の赤ワインと比較すると淡く、口当たりや飲み心地も柔らか。全体に広がる妖艶な風味からは、ちょっとエロティックな秘密めいた不思議さを感じます。また収穫量を徹底的に抑えることでワインに複雑さと外向的な表情を持たせており、カベルネ フランの新しい表情を見せてくれます。
自然酵母による発酵。厳密なろ過や清澄作業も行わず、瓶詰め時の亜硫酸も無添加。
L’Elixir de Tres Longue-Vie / レリクシール ド トレ ロング ヴィ
産地:フランス ロワール地方
品種:カベルネ フラン
スミレなどの華やかな香りに、カシスやブラックベリーといった果実などを感じさせる艶っぽく色気のある香りが加わりつつも、フレッシュな「超長寿の霊薬」と名付けられたキュヴェ。きめ細かく熟度のあるタンニンで、思いの外スルスルと喉を通り過ぎていきます。
滋味深く瑞々しいエレガントな雰囲気は、質の良い豚や地鶏、根菜などの土のニュアンスを感じる野菜やブリーチーズの様な柔らかいチーズとの相性が良く、更なる膨らみを感じさせる味わいに昇華させてくれます。