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Broc Cellars

アーバンワイナリーの先駆者、カリフォルニアのブロックセラーズ

生まれ育ったネブラスカ州のオマハ、その後移住したシアトル、ロサンゼルスを経て、現在バークレーを本拠地としているオーナーのクリス ブロックウェイは、ネブラスカ大学を卒業後、市内のレストランで働き始め、その後太平洋岸北西部に移り住み、そこでワインに興味を持つようになりました。友人が「ワインの造り方を学ぶべきだ」と冗談を言ったのをきっかけに、荷物をまとめてカリフォルニア大学デービス校のワイン醸造コースに入学。その後、カリフォルニア州立大学フレズノ校に移りましたが、フレズノ校にはワイナリーが併設されており、ここで彼は「(余計な器具や薬剤など)使わないものは、全部使わない」というほどのエキスパートになっていました。
学業を終えた彼は、すぐにJCセラーズに就職。JCセラーズは一般的なワイナリーとは異なっており、ここで様々な経験を積むと同時に、サンフランシスコ初の自然派ワインバー「テロワール」に出入りするようになり、多様なナチュラルワインを経験するようになります。そんな彼にとって、自分の好きなワインで色々と実験をしてみたいと考えるようなったのは、自然な事でした。そして、更なる経験を経て独立し、Broc Cellarsが誕生しました。彼のカーヴは2つのスペースから構成されています。1つは複数のステンレスタンク、コンクリートタンク、木製の大樽で埋められたカーヴ、もう1つはバリックと卵型のコンクリートタンクが配置されたカーヴです。発酵はすべて天然酵母で行い、ほとんどの場合、亜硫酸を使用していませんが、ワインの状態によって必要であれば、ワインに完全に馴染むようにするため、瓶詰めの4週間ほど前に極少量を加えます。
主に、インクペンや木炭、黒鉛、色鉛筆などを使ってシンプルな作品を仕上げられた印象的なラベルのデザインは、カリフォルニア在住の女性アーティスト、マルタ・エリス・ヨハンセンの作品です。
彼女に強い影響を与えた実母は、ウィレム・デ・クーニング、ジョン・ケージ、マース・カニングハム、そして彼女のゴッドマザーであるM.C.リチャーズなど、ブラック・マウンテン・カレッジ出身の重要人物と関わっており、彼女は彼らの価値観と信念を受け継ぎ、素晴らしい作品を生み出しています。
Petillant Sparkling Valdiguie Rose Mendocino / ペティアン スパークリング ヴァルディギエ ロゼ メンドシーノ

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:ヴァルディギエ
メンドシーノに位置するリケッティ  ヴィンヤードという畑から収穫されたヴァルディギエから造られたペティアン。樹齢約60年。
収穫されたブドウは足でプレスし、果皮を取り出してからステンレスタンクに入れて、更にプレスを行います。残糖18gまで発酵させた後、2週間冷やして発酵を止め、瓶詰。ドサージュはしていません。
オレンジ掛かったくすんだロゼ色で、ガスは強めの仕上がり。抜栓直後はクリーミーな白桃っぽさが前面に出て、徐々にクランベリーやシトラス、オレンジピール、アセロラの香りが立ち昇ります。奥の方にはカシスのニュアンスも。

辛口過ぎない味わいになっており、アフターに感じる若干の甘さが親しみやすさを演出しています。良い意味で繊細過ぎるところが無く、白桃やイチゴ、赤系ベリーのピチピチした果実と殆ど舌を刺激しないタンニン、程よい酸が口の中で弾け、非常に爽やかで軽やかな質感は、ワインのシンプルな楽しさを感じることが出来ます。

Love Red / ラヴ レッド

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:カリニャン72%、ヴェルディギエ20%、シラー8%

ブロック セラーズのスタンダード ワインで、輪郭のある果実味と、キレのある酸を保つために敢えて早摘みを行っているキュヴェ。カリニャンは、樹齢70年以上で全房と除梗されたブドウを組み合わせたもの。ヴァルディギエは100%全房で、シラーは殆ど除梗されています。
熟成はフレンチオーク樽とコンクリートタンクという2種類を組み合わせて行われ、カリニャンが青く爽快な果実味をもたらし、ヴァルディギエは明るさと引き締まった酸を引き出し、シラーがそれを支えつつ、深みと構造を加えています。
煮詰めた赤系ベリー、アメリカンチェリー、クランベリー、ザクロと言ったフルーツのニュアンスに加え、ミントのハービーな感じとスモーキーさ、黒コショウ、若干のオークっぽさも立ち上ります。フレッシュさと瑞々しい果実感を重視したキュヴェで、弾ける果実と軽やかなスパイシーさ、程よい量のタンニンが心地良く、軽く冷やして飲むことで、心が湧き上がります。
KouKou Cabernet Franc Santa Barbara / クゥクゥ カベルネ フラン サンタバーバラ

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:カベルネ フラン

フレッシュで軽く、冷やしても飲みやすい、彼らがカベルネ フランに求めるスタイルを現したキュヴェ名になっています。
サンタ バーバラ カウンティにあるハッピー・キャニオン地区のサンタ イネズ ヴィンヤードに植えられたカベルネ  フラン。全房で14日間コンクリートタンクで発酵後、別の容器で足を使って攪拌を行い、その後軽くプレスして再度コンクリートに戻し、10ヶ月間熟成。
この区画は、日中は暖かいのにも関わらず、夜間は大幅に気温が下がり、冷却が進む特殊な区画で、葡萄の自然な酸味と新鮮さを保つことができます。土壌は壌土と粘土質のロームに、さまざまなチャートが混ざった蛇紋岩土壌に植えられています。
鮮やかでフレッシュなラズベリーやアメリカンチェリーなどの赤い果実の香りに加え、重厚さも感じられるクラシックなカベルネ フランのテクスチャーに、黒コショウ、ドライハーブ、赤系の花、砂糖漬けのオレンジピールと言った複雑な香りも湧き出てきます。
軽やかなスタイルでありながら、ジューシーさも兼ね備えている味わいで、口の中で赤系ベリーの果実が弾けます。非常にフローラルでプラムやチェリーの心地よい果実と酸が非常に楽しいワインです。
さわやかで、シンプルでクリーン。飲んでいて楽しく、簡単に料理とペアリングできる、赤ワインが苦手な人でもこの赤ワインは飲むことが出来るかもしれません。
Old Vine Carignan Alexander Valley / オールド ヴァイン カリニャン アレキサンダーヴァレー

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:カリニャン85%、アリカンテ・ブーシェ10%、ジンファンデル4%、パロミノ1%

大きなコンクリート タンクに全房で投入し、マセラシオン カルボニックを行います。ブドウの内側から発酵し始めるまでゆっくりと時間をかけていると、その乳酸発酵の効果で果皮の色成分が分解され、まだ潰れていない果実の中の果汁に鮮やかな赤の色が移っていきます。その後、熟成用のコンクリートタンクに戻し8ヶ月の熟成を経て瓶詰。
このワインには、荒々しい古樹の驚くべき深みのある味わいが表れています。素晴らしい古代のブドウ畑(アレクサンダー・ヴァレーのオート・ヴァレー・ヴィンヤード)では、樹齢130年以上のブドウの木を育て続けており、現在のブドウにはない特徴を持っています。昔から畑に植えられていたカリニャンに、パロミノ(ヘレス産の白ブドウ品種)、ジンファンデル、アリカンテをブレンドさせました。特異な砂質土壌のため、フィロキセラが生存できず、現在でも自根のブドウの樹が残っており、カリフォルニア州内で最後に残った自根の樹となっています。

ラズベリーやクランベリー、カシスと言った様々なベリーの香りが爆発的に弾け、時間と共にドライハーブや黒コショウと言ったスパイシーなニュアンスも加わります。シンプルでありながら深みのある味わいで、軽やかで強すぎない酸が、このワインの果実感を引き立てています。ワイン単体で飲むより料理との相性が抜群で、重たい料理をはじめとして、ランチに食べるような軽い食事とも良い相性を見せます。若干冷やして飲むことをお勧めします。
Broc Valdiguie / ブロック ヴァルディギエ

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:ヴァルディギエ

収穫後、ブドウを全房で丸ごと大きなコンクリートタンクへ入れ、セミ マセラシオン カルボニックを行い、プレス後、コンクリートタンクとフレンチオーク樽で10ヶ月間熟成。ヴァルディギエの古樹(樹齢73年)を使用しているため、収量は非常に少ないものの、樹齢の高いブドウを使用することで、複雑さとテクスチャーが現れます。その結果、凝縮した果実と持ち上がるような酸味が出てきます。他のキュヴェよりも立体感のある造りになっており、熟成にも適しています。
鮮やかなルビー色で、ややピンク掛かっています。イチゴ、ラズベリー、プラム、ザクロ、ドライハーブ、革のニュアンスに加え、時間と共に土っぽさ、紅茶、グリーンペッパーの香りも加わり、フレッシュな果実→集中した酸→熟成感のある果実と言った変化を楽しむことが出来ます。
エレガントなボディを持ちつつ、ドライな味わいで、非常にソワフなタンニンを感じることが出来、ついつい飲み進めてしまう柔らかな質感が感じられます。料理との相性も良く、赤身の肉(特にジビエ系)の料理とは素晴らしい相性を見せます。
*ヴァルディギエは、かつてナパ ガメイと言う別名もあった品種。
Nero D’Avora / ネロ ダーヴォラ

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:ネロ ダーヴォラ

フォックス・ヒル・ヴィンヤードに植えられたネロ  ダーヴォラから造られたキュヴェ。20%はアンフォラで果皮と共にマセレーションさせ、残り80%はプレスした後フレンチオークで熟成。アンフォラに入れられたブドウは、マセレーション後、果皮を取り除き、改めてアンフォラに戻され更に6ヶ月間熟成。フレンチオークの中の果汁は10ヶ月間熟成。ネロ ダーヴォラの自然な美しさを引き出すために必要な工程であるとクリスは語ります。

鮮やかな赤系ベリー、特にラズベリーやアメリカンチェリー、プラムの香りに加え、モカっぽさやレーズン、西洋杉、黒コショウ、鉄っぽい香りも加わります。非常にストラクチャーのある果実香が見事で、緻密で集中力のある香りが魅力。
味わいは色調に反してフレッシュな果実を感じられる活き活きとしたベリー感と、ソフトなタンニンが特徴で、爽やかな酸味とミネラル感が全体の軽快さを保っています。明るく外交的な、すぐに楽しめるワインです。
Counoise Mendocino / クノワーズ メンドシーノ

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:クノワーズ

クノワーズは、常に醸造所に入ってくる最後の品種で、大きな房に中くらいの大きさの実をつけ、最も重量のある品種の一つでもあります。100%除梗し、オープントップファーメンターで発酵させ、フレンチオーク樽で10ヶ月間熟成。
南ローヌのブレンド品種として使われていますが、州内の数少ない栽培地の中でも特にユニークな品種。残念なことに2018年が、最後のヴィンテージとなってしまいました。
畑はマヤカマス山脈に位置し、標高1,800フィートにあり、典型的な山岳地帯の痩せた土壌ですが、鉄分が豊富で、岩が多くミネラルに富んでいます。極端に収量は少ない区画です。
濃いルビー色。煮詰めたブラックベリーやダークチェリー、プルーンといった黒系果実の味わいに加え、ローズマリー、オレガノ、ピスタチオ、グリーンペッパーのスパイシーで強烈な香りが沸き立ち、わずかにマッシュルームや鉛筆っぽさも。
非常にフルーティーな味わいで、濃厚ですが、高い酸と柔らかいタンニン、優しいミネラル、暖かい質感のスパイスのお陰でバランスが良く仕上がっており、全体を覆う果実が輪郭のあるキリっとした質感に感じられます。ワイン単体でも、料理と合わせても良い相性を見せますが、レアに焼かれた良質な牛肉との相性は別群で、時間を掛けて飲むと素晴らしさが際立ちます。
Wirth Zinfandel Solano Cty Green Valley / ワース ジンファンデル ソラノ カウンティ グリーンヴァレー

産地:アメリカ カリフォルニア
品種:ジンファンデル

ジンファンデルは、ゴールド ラッシュの頃にカリフォルニアに初めてもたらされた、カリフォルニアを象徴する品種。古樹のジンファンデルを使ったワインを造りたいと生まれたキュヴェ。彼らの考えるジンファンデルとは、アルコール度数が高すぎたり、単純で過激だったりして悪評が立つ前の、古いチャーミングな表現のジンファンデル。ナパ ヴァレーのすぐ東に位置する区画で、火山性で鉄分の多い土壌に1948年、畑の中腹に植えられ、低収量で栽培されています。
このキュヴェで使用されるジンファンデルは Vine Starr とは異なり、樹齢が高く、タンニンやクローブ、チェリーの香り、活き活きとした酸味を持つ、凝縮感のあるワインになっています。
ブドウは80%が全房、20%が除梗。ステンレス製のオープントップ ファーメンターで発酵させ、1日2回ジュースを循環させ、フレンチオーク樽で10ヶ月間熟成。

ジンファンデルの印象を覆す事を目指したキュヴェ。
濃い紫掛かったルビー色。ブラックベリー、ラズベリー、プラムの皮、ドライクランベリーと言った果実に加え、シナモン、黒コショウ、セージ、乾燥させた薔薇、バニラっぽさも溢れてきます。
よくあるジンファンデルとは違い、非常にエレガンスのある果実をまとった味わいで、非常に細やかで質の良い、グリップのあるタンニン、丸みのある酸、ミネラルが全体をまとめ上げており、しなやかさとフローラルなエレガントさをジンファンデルから引き出している。
ジンファンデルに偏見のある方にこそ飲んでほしい逸品。

Vine Starr Zinfandel Sonoma / ヴァイン スター ジンファンデル ソノマ


産地:アメリカ カリフォルニア
品種:ジンファンデル

ジョン ボネの著書「New California Wine」にも掲載された、ブロックセラーズを代表するキュヴェ。
初ヴィンテージの2006年は、ジンファンデルとシラーをブレンドした赤ワインでしたが、2009年に100%ジンファンデルのキュヴェになりました。この年は様々な要因が重なり、アローヘッド ヴィンヤード(より軽やかで、赤いベリーの風味が強い傾向にある区画)と言う区画のジンファンデルが70%使用、残り30%は前年の火災の影響で収穫量が少なかったバック ヒルという区画のブドウを30%使用しています。畑はどちらも火山性の土壌で、アローヘッドは赤い火山岩、バックヒルは石灰質のテラス状になった畑。特にアローヘッドのブドウは、50度の傾斜がついた急斜面に植えられています。
ボジョレーと北部ローヌからインスピレーションを得て作られたこのワインは、よりフレッシュで軽やかなスタイルとなっています。酸とフレッシュな果実味を強調するために、気持ち早めに収穫していますが、2019年は全房を30%、除梗したブドウを70%使用。ステンレスタンクで発酵させ、フレンチオークの樽で10ヶ月間熟成。結果、楽しくて気分が高揚するようなキュヴェが出来たそう。

濃厚なガーネット色。瑞々しいブラックベリーやカシスと言ったダーク系ベリーに加え、爽快なプラム、クランベリーと言った酸のある果実の香りが加わります。徐々にバニラ、タバコの葉やわずかにスモーキーさも加わり、複雑さが増していきます。

味わいは、今年のブレンド比率が功を奏し、重すぎないエレガントな果実味としっとりした丸いタンニン、強すぎないが凛とした酸が素晴らしいバランスを出しています。肉料理との相性が良好で、グリルした赤身の肉や日本式焼き肉と合わせれば、すぐに1本空いてしまうかも。