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Domaine Lefort / ドメーヌ ルフォー

「深い思索の先に見つけたブルゴーニュの本当の姿」

神に祝福された土地ブルゴーニュ。しかし、この地で自由な発想で純粋なワインを造ろうとすると、意外にも多くの制約にぶつかります。世界中からこの地で生まれるワインが求められ、そのため畑の価格は高騰。リスクをとって最良のブドウ栽培を志すとしても、収穫量の減少は即座に大きな経済的ダメージとなるために、何処かで安全策を取らざるをえない。醸造の段階においてもワインの仕上げとなる瓶詰めの段階においても同じく大きな賭けにでるには相当の覚悟か、長年培われた経済的基盤なくしては不可能と言えます。

フランスが誇る最良のテロワールを持つ産地のひとつであるにも関わらず、ある種の葛藤を抱えた産地でもあります。この経済的なハードルは、当然新規参入する生産者にとってはさらに大きなハードルとなります。そもそも畑の取得も困難で、買いブドウでワインを造るにしてもブドウ一房、ワイン一本すら無駄にできません。この地で、新たにワイン造りを始めた若手生産者が、自然で自由な発想を持って個性を備えた魅力的なワインを生み出すのは並大抵のことではありません。近年のロワール地方やラングドック地方で、若手生産者が次々と生まれ、活躍しているのとは対照的です。

そんなブルゴーニュ地方の南、コート ドール(黄金丘陵)と呼ばれるきらびやかな地域からは少し外れたコート シャロネーズ地区。その中のメルキュレ村を中心とした畑から無垢な志でワイン造りに挑戦する革命的な造り手があらわれました。彼の名前はダヴィッド ルフォー、端正な顔つきが印象的な若き挑戦者です。

彼の醸造所を初めて訪ね、彼のワインを口にした時、様々な想いや感情が全身を駆け巡りました。そのワインが持つ純粋な表現力、そしてブルゴーニュという土地からしか生まれないであろう複雑な個性、しかし自由で奔放な明るいキャラクター。多くのブルゴーニュワインからは感じられなくなってしまっていた魅力が、目の前のワインには詰まっていました。まさにブルゴーニュの本当の魅力を再発見した瞬間だったと言えます。そして疑問が湧いてきます。リスクを取ることが難しいこの地域で、どうしてここまで素直で自由なワインが造れるのだろうと。

畑では化学的な物を使いたくないという彼は、(ボルドー液や硫黄を除く)化学合成農薬や化学肥料を用いません。そして、醸造においても過度の人為的な介入は必要ないという信念の下で、自然酵母による発酵を行い、亜硫酸はアッサンブラージュの際に希釈したものをスプレーのように極少量使用し、瓶詰め時の添加は個々のヴィンテージの特性に応じて判断しています。

この自然なワイン造りのアプローチは誰から学んだのだろう、あるいは誰の影響を受けたのだろうと思い、彼になぜ自然なワイン造りに目覚めたのかと尋ねてみました。すると…

「どこかで突然目覚めたわけというわけではなく、10年ワイン造りを経験するなかで自然とその気付きを得ました。もしかして何も入れなくてもいいのではないか、介入は必要ないのではないかと。」

ブルゴーニュの自然派ワインの造り手であれば、ドミニク ドゥランやプリューレ ロックのアンリ フレデリック ロック、マルセル ラピエールなどからの影響を語る造り手が多い中、とても意外な答えでした。そして、自らその気付きに至った背景には、おそらく彼のそれまでの人生が大きく影響しているように思います。

昔から学ぶ事が大好きだったというダヴィッド ルフォーは、大学では薬学、論理学、そして哲学などを学び、知的好奇心を満たしていました。そしてその際、学費の足しにと選んだアルバイトが、メルキュレ村でのワイン造りのサポートでした。そこでの経験が彼の想いをワイン造りの道へと掻き立てます。そして、ワインの醸造学や地質学を学ぶために哲学を探求する道を離れ、学位を取得します。卒業後は実際的な経験を積むために10年ほどメルキュレの生産者の下で働き、2010年に自らのドメーヌを設立しました。

もともと哲学を志していた彼にとって、自然を観察し、その背景にある真理を求め、深く学び、深く考えるという行為はごく自然なことだったのだと思います。物事の表層にとらわれるのではなく、奥に秘められた真実を求めるという姿勢が、既成概念やしがらみに囚われることのない自由なワイン造りを実現させました。ワイン造りに対して全く無垢な状態であった彼だったからでこそ取れるリスク。そしてその挑戦と冒険があるからこそ表現できるブルゴーニュワインの純粋な魅力。ブルゴーニュの魅力を再発見するのに、彼のワインほど相応しいものはありません。

最後に余談ですが、彼の溢れんばかりの才能はワイン造りにとどまりません。ダヴィッドは、使用しなくなったワインの木樽から職人的かつ芸術的なデザインの棚やテーブルなどの家具を作っています。彼の作品はどれも精巧かつ美しく、その美意識や感性がワイン造りにも発揮されているのだと納得させられます。

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Mercurey Chapitre / メルキュレ シャピトル

産地:フランス ブルゴーニュ地方
品種:ピノノワール 100%

シャピトルという区画から生みだされる村名格のワイン。平均樹齢40年のピノノワールを用いて3週間ほどマセラシオン。月の満ち欠けのサイクルに合わせて熟成用の木樽に移すタイミングを図り、そのまま12ヶ月ほど熟成させる。新樽の使用は例年3割程度。使用する新樽は自らの森から切り出した木材を使用してメルキュレ村の樽職人の手によって作られたものを用いる。厳密な清澄も濾過も行わず、瓶詰め時の亜硫酸添加も行わない。平均的な収穫量は25-35hl/haほど。

味わいに関しては、凝縮感のある果実味があるにも関わらず品よく落ち着いた繊細な風味を備えており、ゆっくりと時間をかける事で様々な表情を見せてくれる。しなやかなバランスが特に魅力的で、細部に渡って細心の注意と想いを持って手がけられているのが感じられる。

Mercurey 1er Cru Clos Leveque / メルキュレ プルミエ クリュ クロ レヴェック

産地:フランス ブルゴーニュ地方
品種:ピノノワール 100%

平均樹齢20年のピノノワールを用いて3週間ほどマセラシオン。月の満ち欠けのサイクルに合わせて熟成用の木樽に移すタイミングを図り、そのまま12ヶ月ほど熟成させる。新樽の使用は例年3割程度。使用する新樽は自らの森から切り出した木材を使用してメルキュレ村の樽職人の手によって作られたものを用いる。厳密な清澄も濾過も行わず、瓶詰め時の亜硫酸添加も行わない。平均的な収穫量は30hl/haほど。

味わいは、いきいきとした果実味と密度のあるタンニン、余韻の鮮やかさなどブルゴーニュワインの魅力をぎゅっと凝縮したもの。その一方で、男性的な骨格の強さと余韻のナチュラルな優しさが同居している緻密なバランス感が印象的。

Mercurey 1er Cru Castille / メルキュレ プルミエ クリュ カスティーユ

産地:フランス ブルゴーニュ地方
品種:ピノノワール 100%

カスティーユはクロ レヴェックと地続きの区画で、その個性をより凝縮した味わい。平均樹齢45年のピノノワールを用いて3週間ほどマセラシオン。月の満ち欠けのサイクルに合わせて熟成用の木樽に移すタイミングを図り、そのまま12ヶ月ほど熟成させる。新樽の使用は4割程度。使用する新樽は自らの森から切り出した木材を使用してメルキュレ村の樽職人の手によって作られたものを用いる。厳密な清澄も濾過も行わず、瓶詰め時の亜硫酸添加も行わない。

しなやかな果実味と力強い骨格、余韻の柔らかさが共生しており、香りや味わいの密度感や集中力にひきつけられます。ある程度若い段階で飲む場合は、あらかじめカラフェなどに移してゆっくりと魅力を引き出すことで、オリエンタルで妖艶な雰囲気や豊かな旨みを引き出すことができる。

Mercurey 1er Cru Champs Martin / メルキュレ プルミエ クリュ シャン マルタン

産地:フランス ブルゴーニュ地方
品種:ピノノワール 100%

平均樹齢60年のピノノワールを用いて3週間ほどマセラシオン。月の満ち欠けのサイクルに合わせて熟成用の木樽に移すタイミングを図り、そのまま12ヶ月ほど熟成させる。新樽の使用は例年3割程度。使用する新樽は自らの森から切り出した木材を使用してメルキュレ村の樽職人の手によって作られたものを用いる。厳密な清澄も濾過も行わず、瓶詰め時の亜硫酸添加も行わない。

いい意味での野性味と品の良さが共生した力強い個性を備えたワイン。果実味、タンニン、ミネラル感など各要素の主張がしっかりとしており、それでいて全体としてはまとまりのあるバランスを維持しています。味わいの密度、集中力、芯の強さなど高いポテンシャルをしっかりと感じさせてくれるワインであると同時に、どこか危険な妖艶さも備えた魅惑的なワイン。