CIDRERIE DU VULCAIN / シードルリー デュ ヴュルカン
現在スイスの西部にあるフリブール地方の小さな村、ル ムレ村を拠点にシードルを造るジャック ペリタズは、もともと植物・生物学の研究者でした。森の生態系などの研究を通じて、故郷の自然環境を保全し、生かしていく方法を常に考えていました。そんなジャックがとある運命的な出会いからシードルの生産者へと転向します。
ある日、村の外れを散策していた時、樹から完熟したリンゴがひとつ落ちて来ました。その樹は一切の農薬や化学肥料を施される事なく育っていた古い品種のリンゴの樹で、にも関わらずその実はほとんど利用されることなく樹になったままになっていました。そのリンゴの実を手にとったジャックは、自然や環境を守るという事を頭で考え続けるよりも、この利用されずにいる素晴らしいリンゴの実を生かす具体的な行動を起こす事ができないだろうかと考え、シードルの生産者となる事を決めたのです。
Cidre Transparente / シードル トランスパラント 2015
産地: スイス
品種: リンゴ(トランスパラント他)
キュヴェ名のトランスパラントは「透明」という意味ですが、これはこのシードルに使用されているリンゴの品種名から名付けられています。このシードルは、トランスパラント種をはじめこの地域で古くから栽培されている伝統品種が用いられていて、それらのリンゴの個性をピュアに表現することをコンセプトに造られています。 標高の高い場所に植えられたリンゴから造られるこのシードルは、リンゴらしいいきいきとした果実味と爽快な酸味が感じられ、透明感があり品の良い味わいが楽しめます。まさに「透明」というキュヴェの名前に相応しい繊細さと美しさのあるシードルとなっています。補糖などは行わずに果汁のみを自然酵母で発酵、醸造中に幾度かろ過をした後に瓶詰めされ、瓶内での二次発酵を経て完成されます。
MARC PESNOT / マルク ペノ
ロワール河の下流、ナントの街の周辺にはミュスカデの生産地域が広がります。この地で、底なしの情熱でワイン造りにあたるのがマルク ペノその人です。美味しいワイン造りこそが自分の夢と語るペノ氏は、時間も手間も惜しむことなく、全てをワイン造りに費やしています。
La Desiree / ラ デジレ 2015
産地: フランス ロワール地方
品種: ムロン ド ブルゴーニュ100%
従来は、「AOC ミュスカデ セーヴル エ メーヌ」を取得していましたが、現在は「名」より「実」を取る事となりました。樹齢の高いヴィエイユ ヴィーニュのブドウを非常に低い収量に押さえ、濃密な果実味とムロン ド ブルゴーニュ(ミュスカデ)の清涼感を併せ持ったすばらしい味わいを実現しました。また近年では、もともと香りが強くないこの品種の特性も考慮し、圧搾(プレス)をかなり時間をかけて行うことで、果皮などから香りや旨味を抽出し、アロマティックなワインと仕上げいます。この風味が、地域の一般的な大量生産のミュスカデと比べて「ミュスカデらしくない」と言われるため、アペラシオンを取得できず、現在では申請も行わずヴァン ド フランスのカテゴリでリリースしています。もっとも、「美味しいワインに肩書きは関係ないよ」とマイペースなペノ氏は、爽快な酸味と心地よいミネラルがあり、じわじわ口の中に広がる、熟した果実の旨みを備えたムロン ド ブルゴーニュ(ミュスカデ)を造り続けています。
ALEXANDRE BAIN / アレクサンドル バン
サンセールからロワール川を渡り、プイィ フュメの丘に向かう途中に、「ドメーヌ アレクサンドル バン」があります。彼は1977年生まれ、子供の頃、サンセールにある祖父の家の近くに移り住んだ時、農業をしていた祖父を見て興味を持ち、農業学校に進みました。農業とは関係のない仕事をしていた父が自然派ワインのファンであった事から、ワイン造りに興味を持ち、卒業後にブルゴーニュや南仏を始め、カリフォルニアのワイナリーでも研修を積み、メヌトゥー サロンの「ドメーヌ アンリ プレ」で醸造長を務めた後、2007年に畑を購入して独立しました。5haほどの広さから始めたワイン造りも現在は11haほどの広さになり、中生代ジュラ紀後期の地層であるキンメリジャンやポルトランディアン土壌を備えた畑から印象的な味わいのワインを生み出しています。
VDF Pierre Precieuse / ピエール プレシューズ 2014
産地: フランス ロワール地方
品種: ソーヴィニヨンブラン100%
キュヴェ名であるピエール プレシューズは、このワインを生み出す畑が、土が少なく石(仏語でpierre)の多い土壌である事と、2010年に生まれた息子の名前がピエールである事にちなみ、「大切なピエール」という意味を込め名付けられました。
中生代ジュラ紀後期の地層であるポルトランディアン土壌(石灰質)のこの畑は、白く大きい石が多く見られるのが特徴で、その土壌特性によって、水はけがよくブドウが水を蓄え過ぎるのを防いでくれる上、過度な暑さからもブドウを守ってくれます。その為、ブドウの熟度が穏やかに上昇していくので、凝縮した蜜のようなフレーバーと果実味のいきいきとした雰囲気を併せもったバランスの良いワインを生み出します。自然酵母による発酵、ステンレスタンクでの熟成を経て、厳密な濾過(ろか)や清澄は行わず瓶詰めされます。
DOMAINE RIVATON / ドメーヌ リヴァトン
南フランス ルーション地方、フレデリック リヴァトンがこの乾いた大地にやって来たのは2004年。かつては酒精強化したワイン、リヴザルトの産地として栄えたこの地域も現在ではすっかり寂れてしまい、地元の協同組合などもバタバタと倒産しています。その一方で、高い樹齢を誇るブドウ畑の多くが売りに出され、この地での過酷な仕事を覚悟した人だけが、宝石のような畑を手に入れ、ワイン造りに挑戦することができます。フレデリック リヴァトンもその一人。暑く乾燥した大地からみずみずしくエネルギーに満ち溢れるワインを生み出しています。
Poil dans la Main / ポワル ダン ラ マン NV15
産地: フランス ルーション地方
品種: グルナッシュ、カリニャン、シラー
キュヴェの名前は直訳すると「手のひらの毛」ですが、転じて「怠け者」と言った意味があるとのこと。グルナッシュやシラー、カリニャンなどのブドウを用いてダイレクトプレスで造られたロゼワイン。まろやかな口当たりとチャーミングな果実のフレーバーが印象的な素直でナチュラルな飲み心地があり、濁りも見られますが、時間の経過とともに素朴で優しい旨みが広がります。
OZIL / オジル
2013年にトマとジャン=ダニエルのオジル兄弟によってはじめられたドメーヌ オジルは、アルデッシュの潮流の中で生まれた新しい自然派ワインの造り手です。彼の父親は、典型的なこの地域の栽培農家で、ブドウのみを栽培してそれを協同組合に売っていました。しかし近年は、協同組合の倒産や低価格な新世界ワインの台頭によるネゴシアンの販売不振などの影響もあり、栽培農家として生計を維持するのが年々厳しくなっています。そんな中、息子のトマ オジルは、近隣のジェローム ジュレやジル アゾーニの成功を見て、自分たちの代では自然派ワインを造るんだという意志を固めて行きます。トマはまずジェローム ジュレの下でワイン造りを学び、そして独立前にはジル アゾーニの下でも研修を重ねます。特にジル アゾーニの息子であり、現在は引退したジルの後を継いでワイン造りを手がけるアントワンヌ アゾーニとオジル兄弟は、同世代ということもあって親交が深く、切磋琢磨しながら先駆者達の経験と知識をしっかりと吸収して、初ヴィンテージからキラリと光る魅力の備えたワインを生み出しています。
Gourvel / グールヴェル NV15
産地: フランス コート デュ ローヌ地方
品種: シラー60%、グルナッシュ40%
シラー、グルナッシュともに粘土石灰質土壌の区画に植わる樹齢35年のブドウ樹より。グルナッシュは除梗無しで破砕・マセラシオン。シラーは除梗し、果粒のみにて15日間マセラシオン。 香りにはシラーらしい鮮やかな紫系果実の芳香と華やかなスミレのニュアンス、僅かに胡椒などのスパイスのニュアンスが感じられ、還元臭はなし。口に含むとなめらかな口当たりにまず驚かされ、ほんのり甘く、濃密な果実味と僅かな揮発酸、余韻のチャーミングさなどのバランスが秀逸なスムーズな飲み心地のワイン。
LE TEMPS DES CERISE / ル トン デ スリーズ
パリ革命時代の悲劇から生まれた歌曲から自らのドメーヌ名をとったのは東ドイツ出身のアクセル プリュファー。経済大学に2年ほど通っていましたが、自分の望む本来の生き方とは違うのではないかと疑問を抱くようになり、バーなどで働きはじめます。その後、兵役に就くのを嫌ってキャンピングカーに乗り込み、安住の地を求めて放浪します。そして行き着いたのがフランス ラングドック地方。この地で彼は、ヤン ロエル、ジャン=フランソワ ニック、エリック ピュフェリン(ラングロール)と出会い、彼らからワイン造りの手法とそれにかける情熱を学び、自らもヴィニュロン(ブドウ・ワイン生産者)となりました。
Les Lendemains qui Chantent / レ ランドマン キ シャントゥ 2013
産地: フランス ラングドック地方
品種: グルナッシュ100%
レ ランドマン キ シャントゥは、「輝かしい未来」の意味で、作家でありジャーナリスト、そして政治家でもあったポール ヴァリアン=クートゥリエによる言葉の一節。彼は「コミュニズムは世界の青春であり、輝かしい未来を約束する。」と説きました。このキュヴェは、アクセル自身が満足する品質に達した年にのみリリースされるワインで、2008年にリリースされた後は09年、10年とリリースされず、11年に再び登場。12年も造られず、13年に再びリリースされました。
平均樹齢35年から40年ほどのグルナッシュ ノワールのみを用い、平均収穫量は20hl/haほどという低収量。ブドウ樹が植わる畑は標高450mの場所にあり、ワインに伸びやかな果実味と爽快感をもたらしています。丁寧に収穫、選果されたブドウを自然酵母のみで発酵させ、2週間ほどマセラシオン カルボニックを行った後に大樽にて熟成。亜硫酸を使用せずに瓶詰めされます。このワインには、華やかでありながら華美になり過ぎない品の良い風味があり、ふくらみのある果実味、繊細かつ長い余韻が魅了です。
pour soiree…
ここからは、第三部用のスペシャルワイン…
DARD & RIBO / ダール エ リボ
北ローヌの地で、自然派ワインを代表する生産者として知られるダー エ リボ。当主のルネ ジャン ダールと数十年来の友人でありパートナーであるフランソワ リボの二人によって運営されるドメーヌです。ワインの評価も非常に高く、多くの自然派ワインファンを魅了しています。その一方で、権威的なワインジャナーリズムを嫌い、メディアへの露出が極端に少ないために、知る人ぞ知る存在であるともいえます。
「もう自然派ワインを代表する生産者と言われるのは、嬉しくないんだ。僕達は、ずっと昔から美味しいワインを造ろうと努力し続けてきたけど、ただ当たり前のことを積み重ねてきただけなんだ。」
Saint Joseph Rouge / サン ジョセフ ルージュ 2012
産地: フランス コート デュ ローヌ地方
品種: シラー100%
ダール エ リボにとって全ての要素でバランスの取れたラインナップといえるのがこのサン ジョセフ。ルネ ジャン ダールが父親から譲り受けたという、畑もこのサン ジョセフの中にあり、ひときわ想いを込めてワイン造りに当たっています。
クローズ エルミタージュの果実味をより深く、よりタイトにした、締まった味わい。骨格もあり、ボディもあるが、近年のダール エ リボの最大の特徴である緻密なフレーバーやシルキーな口当たりは健在で風格とシラーの女性的な美しさを感じさせるワイン。