
「夢の島から来た原始派ワイン」 ジオット・ビーニ
シチリア島の遥か数百キロ南。チュニジア(アフリカ大陸)とのほぼ中間に位置する火山島が「パンテレッリア」です。南イタリアの巨匠、マルサラのマルコ・デ・バルトリが所有する農園、「ブックラム」で有名なこの島は、イタリアワインの愛好家にとっては、憧れの島といえます。
そしてこの島で今、アンフォラ(素焼きの壺)を地中に埋めてワインの醸造を行う、原始的なワインづくりに取り組んでいるのが、ジオット ビーニのガブリオ・ビーニ氏です。
※勿論、アンフォラを使う理由は、彼なりにワインづくりの本質を突き詰めた結果行き着いていることで、原始的なワインづくりが目的ではありません。
実は、ビーニ氏はミラノに住むミラネーゼの建築家で、彫刻を趣味とし、東洋の宗教などにも詳しい文化人であり、イタリアでは知る人ぞ知るガストロノミー(美食家)です。
食べ物を追求するエネルギーは半端ではなく、ついにパンテッレリア島でケッパーの塩漬け(フランス、ゲラント産の塩を使用)やオリーブオイル、オレガノなどをつくり始め、現在はミラノとパンテッレリアを行ったり来たりの生活をしています。ホンモノの食材を求め続けるうちにワインへの情熱も高まり、究極の自然ワインをつくるため、島にブドウ畑を購入しました。
畑はすべてビオロジックで、ブドウはパンテッレリア伝統の極低く剪定された株仕立ての古い畑(現在、自分でも新しいブドウ樹を植え、畑を準備中)。モスカート(ジビッボ)、カリニャン(カリニャーノ)、その他土着のぶどうが少々を栽培しています。
畑はまったく機械が入れないので、手作業でコンカとよばれる蟻地獄のような穴をブドウ樹のまわりに堀り、アフリカからの強く熱い風から樹を守っています。
屋外にスペイン製のアンフォラを地中に埋め込み、簾で簡素な日よけをつけただけの野ざらし醗酵・熟成。ブドウを収穫したら直接アンフォラの中で手作業で枝をとり(除梗)、ぶどうを踏み潰します。醗酵がはじまったらフォラトゥーラを(手作業で攪拌)定期的におこない、醗酵&マセレーション終了後も皮にひたしたまま3ヶ月放置。一月に皮を取り除いて、またアンフォラへ。春にノンフィルター・亜硫酸添加なしでボトリングします。すべての工程で亜硫酸完全無添加です。樹齢はジビッボが50年、カリニャンやその他のぶどうが平均40年くらいです。2006年の生産数はジビッボ(白)1500本、カリニャーノ(赤)1400本。
ビーニ氏はシチリアでは「狂人」呼ばわりされているようですが、文化人、食の探求者としては有名で、テレビやガンベロロッソの常連で、セミナーなども開いている著名人です。
「アンフォラ(素焼きの壺)での醸造に関して」
「ワインの醸造(発酵と熟成)には、ある程度以上の空気(酸素)が必要である。」これは、イタリアの自然派生産者に多く見られる考え方の傾向かもしれません。フランスの自然派生産者は、亜硫酸を加えたくないために密閉した環境で醸造を行う場合が多いのに対して、イタリアでは亜硫酸を加えなくても大樽や大型の開放槽での醸造が基本となり、中には地中に埋めたアンフォラで醸造を行うことにこだわる生産者が数名います。
グラヴナー(フリウリ)、ヴォドピヴェッチ(フリウリ)、リスピダ(ヴェネト)、フランクコーネリッセン(シチリア)、コス(シチリア)、などが有名ですが、そこに至る考え方はそれぞれ違いがあるものの、アンフォラは多くの空気を内部に取り入れてしまうため、非常に大きなリスクが伴うということと、それを埋める場所によって、ワインのキャラクターに与える影響はかなり大きくなります。彼らはワインの醸造に対する既存の概念をすべて捨て、多大なリスクを負いながら理想とするワインづくりに取組んでいます。そのワインは常識では考えられない味わいと魅力を備えています。
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